内積とベクトルの応用【内積の定義・なす角・射影】
ベクトルの内積は、2つのベクトルの「向きの重なり具合」を数値で表す演算です。内積を使うと、2つのベクトルのなす角を求めたり、一方のベクトルを他方に射影した長さを計算したりすることができます。この記事では、内積の定義から具体的な計算、さらに応用まで順を追って解説します。
1. 内積の定義
2つのベクトル a と b があり、それらのなす角を θ(0∘≤θ≤180∘)とするとき、内積は次のように定義されます。
a⋅b=∣a∣∣b∣cosθ
内積は**スカラー(数)**であり、ベクトルではない点に注意してください。
1.1. 内積の符号
| θ の範囲 |
cosθ の符号 |
内積の符号 |
| 0∘<θ<90∘ |
正 |
正 |
| θ=90∘ |
0 |
0 |
| 90∘<θ≤180∘ |
負 |
負 |
特に a⋅b=0(かつ a=0, b=0)のとき、a⊥b が成り立ちます。
2. 成分を使った内積の計算
平面ベクトル a=(a1,a2)、b=(b1,b2) のとき、内積は成分を使って次のように計算できます。
a⋅b=a1b1+a2b2
この式は定義から導けます。∣a∣2=a⋅a=a12+a22 であることも確認しておきましょう。
2.1. 例:成分での内積計算
a=(3,1)、b=(2,−4) のとき
a⋅b=3×2+1×(−4)=6−4=2
3. なす角の求め方
内積の定義 a⋅b=∣a∣∣b∣cosθ を cosθ について解くと
cosθ=∣a∣∣b∣a⋅b
成分を使えば
cosθ=a12+a22b12+b22a1b1+a2b2
3.1. 例題 1:なす角を求める
a=(1,3)、b=(3,1) のなす角 θ を求めよ。
解答
a⋅b=1×3+3×1=23
∣a∣=12+(3)2=4=2
∣b∣=(3)2+12=4=2
cosθ=2×223=23
0∘≤θ≤180∘ の範囲で cosθ=23 を満たすのは θ=30∘。
4. 垂直条件への応用
a=0、b=0 のとき
a⊥b⟺a⋅b=0
4.1. 例題 2:垂直になる条件
a=(t,3)、b=(2,t−1) が垂直になるような t を求めよ。
解答
a⋅b=t×2+3×(t−1)=2t+3t−3=5t−3
垂直条件 a⋅b=0 より
5t−3=0⟹t=53
5. 射影(正射影)
ベクトル a を b 方向に射影した長さ(正射影)は
射影=∣a∣cosθ=∣b∣a⋅b
この値は正・負・ゼロいずれもとりえます。
5.1. 例題 3:射影を求める
a=(4,3)、b=(1,0) のとき、a を b に射影した長さを求めよ。
解答
a⋅b=4×1+3×0=4,∣b∣=1
射影=14=4
b=(1,0) は x 軸方向の単位ベクトルなので、射影は a の x 成分に等しく、直感と一致します。
6. 内積の性質まとめ
内積には次の性質があります。
- a⋅b=b⋅a(交換法則)
- a⋅(b+c)=a⋅b+a⋅c(分配法則)
- (ka)⋅b=k(a⋅b)(スカラー倍)
-
a⋅a=∣a∣2
これらを用いると ∣a+b∣2=∣a∣2+2a⋅b+∣b∣2 など、様々な公式を整理できます。
関連記事として、平面ベクトルの基本的な演算については「平面ベクトルの基本」を、空間への拡張については「空間ベクトル」を参照してください。
7. クイズ
-
a=(2,1)、b=(−1,2) の内積 a⋅b を求めよ。
正解:0 a⋅b=2×(−1)+1×2=−2+2=0。内積が 0 なので a⊥b。
-
a=(3,0)、b=(1,1) のなす角 θ を求めよ。
正解:45∘ a⋅b=3、∣a∣=3、∣b∣=2 より cosθ=323=21、よって θ=45∘。
-
a=(1,k) と b=(4,−1) が垂直になるとき、k の値を求めよ。
正解:k=4 a⋅b=1×4+k×(−1)=4−k=0 より k=4。確認:a=(1,4)、b=(4,−1) のとき a⋅b=4−4=0。