極形式と回転【ド・モアブルの定理・回転移動】
複素数を極形式で表すと、掛け算が「絶対値を掛けて偏角を足す」操作になります。これは複素数平面上での回転と拡大に対応しており、幾何学的な直感がぐっと深まります。この記事では極形式の定義からド・モアブルの定理、回転移動の応用まで順を追って解説します。
1. 極形式とは
複素数 z=a+bi(a,b∈R)に対して
- 絶対値(原点からの距離):∣z∣=r=a2+b2
- 偏角(x 軸正方向からの角度):argz=θ(tanθ=b/a)
とおくと、a=rcosθ、b=rsinθ より
z=r(cosθ+isinθ)
この表し方を複素数の極形式といいます。
1.1. 例:極形式に直す
z=1+3i を極形式で表せ。
r=12+(3)2=4=2
cosθ=21,sinθ=23⟹θ=3π
z=2(cos3π+isin3π)
2. 複素数の積と商の極形式
z1=r1(cosθ1+isinθ1)、z2=r2(cosθ2+isinθ2) のとき
z1z2=r1r2{cos(θ1+θ2)+isin(θ1+θ2)}
z2z1=r2r1{cos(θ1−θ2)+isin(θ1−θ2)}
掛け算 → 絶対値の積・偏角の和、割り算 → 絶対値の商・偏角の差、と覚えましょう。
これは三角関数の加法定理から導けます。cos(α+β)=cosαcosβ−sinαsinβ などを使って計算すると確認できます。
2.1. 例題 1:積の計算
z1=2(cos4π+isin4π)、z2=3(cos6π+isin6π) のとき z1z2 を求めよ。
解答
∣z1z2∣=2×3=32
arg(z1z2)=4π+6π=123π+122π=125π
z1z2=32(cos125π+isin125π)
3. ド・モアブルの定理
極形式の積の公式を n 回繰り返すと
(cosθ+isinθ)n=cosnθ+isinnθ
これをド・モアブルの定理といいます(n は整数)。
絶対値 r がある場合は
{r(cosθ+isinθ)}n=rn(cosnθ+isinnθ)
3.1. 例題 2:ド・モアブルの定理で累乗を計算
(1+i)8 を計算せよ。
解答
まず 1+i を極形式に直す。
r=2,θ=4π
1+i=2(cos4π+isin4π)
ド・モアブルの定理を適用する。
(1+i)8=(2)8(cos48π+isin48π)
=16(cos2π+isin2π)=16(1+0)=16
4. 回転移動
複素数平面上で、点 z を原点を中心に角 α だけ回転させた点は
z′=z⋅(cosα+isinα)
で表されます。これは z に偏角 α・絶対値 1 の複素数を掛けることと同じです。
また、点 w を中心に z を角 α だけ回転させると
z′−w=(z−w)(cosα+isinα)
z′=(z−w)(cosα+isinα)+w
4.1. 例題 3:回転移動
複素数平面上の点 z=2+i を原点を中心に 2π だけ回転させた点 z′ を求めよ。
解答
cos2π+isin2π=0+i=i
z′=(2+i)⋅i=2i+i2=2i−1=−1+2i
確認:∣z∣=5、∣z′∣=1+4=5 — 絶対値は変わっていない。
4.2. 例題 4:別の点を中心とした回転
点 z=3+0i を点 w=1+i を中心に 2π だけ回転させた点 z′ を求めよ。
解答
z−w=(3−1)+(0−1)i=2−i
(z−w)⋅i=(2−i)⋅i=2i−i2=2i+1=1+2i
z′=(1+2i)+w=(1+2i)+(1+i)=2+3i
5. 1の n 乗根
zn=1 を満たす複素数を1の n 乗根といいます。ド・モアブルの定理より
zk=cosn2kπ+isinn2kπ(k=0,1,2,…,n−1)
これらは複素数平面上で原点を中心とする半径1の円(単位円)を n 等分する点に対応します。
5.1. 例:1の3乗根
z3=1 の解(n=3, k=0,1,2)
z0=1,z1=cos32π+isin32π=−21+23i,z2=−21−23i
関連記事として、複素数平面の基本(加減算・共役複素数・絶対値)については「複素数平面の基本」を参照してください。
6. クイズ
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z=−1+i の絶対値と偏角を求めよ。
正解:∣z∣=2、argz=43π r=(−1)2+12=2。cosθ=−21、sinθ=21 より θ=43π(第2象限)。
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ド・モアブルの定理を使って (cos6π+isin6π)6 を求めよ。
正解:−1 cos66π+isin66π=cosπ+isinπ=−1+0i=−1。
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複素数平面上の点 z=1+3i を原点を中心に −3π(時計回りに 60°)回転させた点 z′ を求めよ。
正解:z′=2 cos(−3π)+isin(−3π)=21−23i。(1+3i)(21−23i)=21−23i+23i−43i2⋅2……を計算すると =21+23=2。(∣z∣=2、偏角 3π の点を −3π 回転 → 偏角 0、z′=2)