標本調査と推定【母集団・標本・信頼区間】
統計的な推測は、データの一部(標本)から全体(母集団)の特徴を推し量る考え方です。数学Bでは、標本調査の基本から信頼区間を用いた推定まで学びます。現代社会で広く使われる手法であり、入試でも頻出のテーマです。
1. 母集団と標本
1.1. 母集団(ぼしゅうだん)
調査や分析の対象となる集団全体を母集団といいます。
例: 日本の高校3年生全員、ある工場で製造されたネジ全数。
母集団の平均値を母平均(記号:m または μ)、標準偏差を母標準偏差(記号:σ)といいます。
1.2. 標本(ひょうほん)
母集団の一部として実際に取り出したものを標本といいます。標本を取り出す操作を標本抽出(またはサンプリング)といいます。
無作為抽出(ランダムサンプリング): 母集団のすべての個体が等しい確率で選ばれるような抽出方法。偏りのない推測のために重要です。
標本のサイズ(個数)を標本の大きさ(記号:n)といいます。
2. 標本平均とその分布
2.1. 標本平均
大きさ n の標本 X1,X2,…,Xn の平均を標本平均といい、Xˉ で表します。
Xˉ=nX1+X2+⋯+Xn
2.2. 標本平均の期待値と標準偏差
母平均 m、母標準偏差 σ の母集団から大きさ n の標本を無作為抽出するとき、標本平均 Xˉ について次が成り立ちます。
E(Xˉ)=m
σ(Xˉ)=nσ
ポイント: 標本の大きさ n が大きくなるほど、σ(Xˉ) は小さくなります。つまり、多くのデータを集めるほど標本平均は母平均に近い値を取りやすくなります。
3. 標本平均の正規分布への近似
3.1. 中心極限定理
母集団の分布がどのような形であっても、標本の大きさ n が十分大きいとき、標本平均 Xˉ は正規分布に近づきます。
Xˉ∼N(m, nσ2)(近似的に)
これを標準化(z スコアへの変換)すると
Z=σ/nXˉ−m∼N(0,1)(近似的に)
3.2. 正規分布の重要な確率
標準正規分布 N(0,1) において、よく使う確率は次のとおりです。
P(−1.96≤Z≤1.96)≈0.95(95%)
P(−2.58≤Z≤2.58)≈0.99(99%)
4. 信頼区間(区間推定)
4.1. 信頼区間とは
標本平均 Xˉ から母平均 m を推定するとき、「この範囲に m が含まれる」という区間を信頼区間といいます。
4.2. 95%信頼区間の求め方
母標準偏差 σ が既知(またはnが大きく標本標準偏差で代用できる)の場合、母平均 m の95%信頼区間は次の式で与えられます。
Xˉ−1.96⋅nσ≤m≤Xˉ+1.96⋅nσ
「95%信頼区間」の意味: 同じ操作(標本抽出 → 信頼区間の計算)を100回繰り返したとき、そのうち約95回は真の母平均 m がその区間に含まれる、という意味です。「95%の確率で m がこの区間にある」とは意味が違うことに注意しましょう。
5. 例題
5.1. 例題1:信頼区間の計算
問題: ある高校の3年生の数学の得点(母標準偏差 σ=20 点とする)について、100 人を無作為に抽出して調べたところ、標本平均は Xˉ=68 点だった。母平均 m の95%信頼区間を求めよ。
解答:
n=100、σ=20、Xˉ=68 を公式に代入します。
Xˉ−1.96⋅nσ=68−1.96×10020=68−1.96×2=68−3.92=64.08
Xˉ+1.96⋅nσ=68+3.92=71.92
よって、95%信頼区間は 64.08≤m≤71.92(点)。
5.2. 例題2:標本の大きさと信頼区間の幅
問題: 例題1と同じ条件で、標本の大きさを n=400 に増やした場合の95%信頼区間を求めよ。
解答:
1.96×40020=1.96×2020=1.96
95%信頼区間:68−1.96≤m≤68+1.96、すなわち 66.04≤m≤69.96(点)。
比較: n=100 のときの区間幅は 71.92−64.08=7.84 点、n=400 のときは 69.96−66.04=3.92 点。標本を4倍にすると区間幅が半分になります(1/4=1/2)。
5.3. 例題3:標本平均の期待値・標準偏差
問題: 母平均 m=50、母標準偏差 σ=10 の母集団から大きさ n=25 の標本を無作為抽出するとき、標本平均 Xˉ の期待値と標準偏差を求めよ。
解答:
E(Xˉ)=m=50
σ(Xˉ)=nσ=2510=510=2
6. まとめ
| 用語 |
記号 |
説明 |
| 母平均 |
m |
母集団全体の平均 |
| 母標準偏差 |
σ |
母集団全体の標準偏差 |
| 標本の大きさ |
n |
取り出した標本の個数 |
| 標本平均 |
Xˉ |
標本の平均値 |
| 標本平均の標準偏差 |
σ/n |
標本の大きさが増えると小さくなる |
| 95%信頼区間 |
— |
Xˉ±1.96⋅nσ |
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8. クイズ
1. 母平均 m=60、母標準偏差 σ=15、標本の大きさ n=9 のとき、標本平均 Xˉ の標準偏差はいくらか。
答えを見る
正解:5
σ(Xˉ)=915=315=5
2. 95%信頼区間の計算で使う標準正規分布の値(z 値)はいくらか。
答えを見る
正解:1.96
P(−1.96≤Z≤1.96)≈0.95 を利用します。
3. 標本の大きさを n から 4n に増やすと、信頼区間の幅はどう変わるか。
答えを見る
正解:幅が 21 になる。
幅は nσ に比例するので、n が4倍になると 4n=2n となり幅は半分になります。